2008-04-18(Fri)
モハよう誕生秘話・その2
今日は、前々回の「モハよう誕生秘話」の続編です。
ビーコムさんの編集者であり友達のM君に、企画を出しておいて大変申し訳ないけれど、鉄道本を書く自信がないと言った私。
なぜなら、仕事で鉄道を書くには知識が足りないと感じたからです。
確かに私は鉄道が大好きです。
これは間違いありません。
でも、仕事として書くということを現実に考えたとき、私には難しいと感じたのです。
趣味で好きなことと、仕事として書くことは必ずしも一致しません。
私は雑誌や書籍をたくさん書いてきたので、ライティング力はあると自負していますし、もちろん一般の方よりは鉄道に関する知識はあると思いますが、仕事として書くほどの鉄道の知識は不足しています。
長年取材を重ねながら書いていらっしゃる鉄道ライターさんはもちろん、お金を払って読んでくれる鉄道ファンのみなさんに大変失礼なことになると思ったのです。
でも、M君は「とりあえず自分なりの案を持って次の打ち合わせに来てよ」と笑顔です。
本当にいいのかと自問自答しながら、私はオーム社さんに向かいました。
オーム社開発局のSさんと、上司のTさん。
そしてビーコムのM君とマンガ担当の鈴木スミスさん(ビーコムさんはマンガを使った書籍制作がお得意なので、マンガを入れることは最初から決まっていた)。
そして私とで打ち合わせが始まりました。
みなさんは楽しそうに話していらっしゃいますが、私だけ口が重い……。
「吉田さんはどんなところに鉄道の魅力を感じるのですか?」とM君が私に振ります。
「……キハ20系を見るとゾクゾクします」と私。
「吉田さんはキハ20系がお好きですか! 私は気動車ならキハ58が好きですね」とSさん。
「ほかには?」とM君。
「……車止めを見ると背筋に電流が走ります」と私。
「車止めとは面白いところにきましたね! 私はキロポストを見るのが楽しいです」とSさん。
「ほかには?」とさらにM君。
「分岐器を見るのも好きです。レールが分岐しているところを見ながら、どうやって車輪が通るのか想像するだけでワクワクします」と私。
「その気持ち、よく分かります!」とSさん。
「そうやって、吉田さんの面白いと思っていることを書けばいいんですよ」とM君。
すると、Sさんが笑顔でおっしゃいました。
「鉄道の設備を解説したり、知識を詰め込んだ本は、今までにたくさん出ています。それを我々が新たに作っても意味はないと思いますよ。それよりも、どうして鉄道が面白いのか、吉田さんの視点で書いてみませんか?」
「……車止めや分岐器など書いた本はあまりありませんし」と困惑気味の私。
それから議論が続き、私もつい熱が入りました。
「この前読んだある鉄道ライターさんの本で、鉄道オタクはこう電車に乗ると断定しているコーナーがありました。私は一鉄道ファンとして不愉快ですね。少なくとも私はそんな乗り方はしないので、断定はやめてほしい。それに、どうして鉄道オタクという言い方をするのでしょう? 何か別世界のような印象を受けますよね。それを鉄道ライターさん自らおっしゃる意味が分かりません。鉄道は毎日利用したり、とても身近なもので、興味を持つのはむしろ当然のはず。最近鉄道ブームのせいか、鉄道ファンや鉄道そのものをオモシロおかしく書きすぎている風潮を感じます。どうして、もっとストレートに鉄道の魅力を伝えようとしないのでしょうか? 鉄道が可哀想です!」
すると、Sさんがおっしゃってくださいました。
「どうして鉄道にハマるのか、という本を作ってみませんか。車止めでも分岐器でもいいじゃないですか。吉田さんがストレートに感じている鉄道の魅力を書いてみましょうよ! ねっ、Tさん?」
「それがいいと思いますよ」とTさんも笑顔です。
「マンガを使えば、今まで鉄道に対して敷居が高いと感じていた人もハードルが低くなるかもしれません。吉田さんだからこそ書くことのできる鉄道にハマる理由を素直に解説した本を作りましょう!」とSさんの明るい声が、私の背中を押してくださいました。
鉄道好きな自分だからこそ書くことのできる鉄道の魅力……よし、やってみよう!
そう私は決心し、正式にこの仕事をやらせていただくことにしました。
オーム社さんからの帰り道、「僕はこうなると思ってたよ」と涼しい顔のM君。
「面白い本になると思いますよ」と励ましてくださる鈴木スミスさん。
このようにして『モハようございます。』は作り始めることになったのです。
鉄道ってこんなに面白く、奥が深い。
ブームの今だからこそ、真っ直ぐにその魅力を伝えよう!
マスコミの世界に携わっている自分には、鉄道の魅力を伝える義務があるのではないかとさえ感じました。
私はおだてられると富士山にでも登ってしまう方ですが、Sさんがおっしゃってくださった企画意図を本当に実現したいと思ったのです。
つい、当時のことを思い出し、熱くなり長文になってしまいました。
こんな思いからスタートした『モハようございます。』をぜひ手に取っていただけたら、この上ない喜びです。
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